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眉村卓『消滅の光輪』(上)(下)

いいSFを読ませてもらった。それが最初の感想だ。読後感をたっぷりと味わいたい物語を読んだ時はいつもそうだ。心の中でエンディングの余韻に拍手しながらも、身体はぼうと思考が物語を反芻してたゆたうのに任せておく。そうすると次々と印象的な場面が思いうかんできて、物語につきつけられた命題に対する自分なりの考えの欠片がうかんできて、なおいっそう余韻を印象深いものにする。

司政官シリーズは名前だけは以前から聞いていたものの、すこし前まではとんと縁が無い物語だった。ロボット官僚とのインタラクション、官僚である司政官としての立場、そんな噂は端々で聞こえていたものの、実際に読んだことはなく、図書館でも出会うことはなかった。

そんな中、復刊で出会ったのが前作となる「司政官 全短編」だった。司政官制度の黎明期から円熟期に至るまで、その折々の舞台で語れらえる様々な様相に魅了された。司政官制度というもの自体に大して思いを抱いたり、現実と対比したりしたわけではない。ただ、アジモフのファウンデーションがそうであるように、ここにはそのような舞台があり、物語があり、歴史があり、そしてセンスオブワンダーがあると認識した。

だから、星雲賞を獲得した長編は是非読みたいものの一つだった。日本SF業界ローカルの賞であって一般的な権威はそんなに無い[1]とわかるし、実際その年のファン投票にすぎないとわかってはいるのだが、星雲賞に輝いた作品が何かその年の特徴をとらえている事も確かと言える。過去のSFと比較して認められたかどうかはともかく、その年の雰囲気として良い作品であったとは言えるわけだ。

そして、結論から言えば期待以上と言えた。後半2/3位は若干急ぎすぎの気もしたが、落日の権威を持つ司政官という存在に対して、企業体や現地の住民、軍隊、元々は司政官から派生し独立した巡察官、そして独特の間合を持つ先住民。こういった大局的な集団に加えて、ランや先住民の代表といった個々の立場、SQ1に代表されるロボット官僚の立場があわさり、パニックものや権謀ものではない司政官物を成している。今迄に読んだ短編と違い、複数の司政官を対比する機会があったのも、より司政官というものを考える材料となっているのだろう。

とまあ今さらながら余韻にふけりつつ考えてみても、この長編が最初に話題になった時代にこのような事はいくらでも書かれているわけで、客観的に見れば「やっと知ったの?」という程度のことなのかもしれない。

けれども、良い物語を初めて読んだこの余韻。こればかりは譲ることはできない。これがあるから本が好きだと心根から言える。最初の言葉を繰替えすことになるけれども、いいSFを読ませてもらった。本当に言いたい感想はそれだけだ。

  1. そもそも最終投票がSF大会というお祭りの中で、意思表明する余裕がある人物によるものである。対比される暗黒星雲賞を見てもわかるように、その年の雰囲気を反映したものであってもあくまでお祭りのノリがどこか含まれる賞だ。それだけに価値があるとも言えるわけだが。 []

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