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学と産の連携による基盤ソフトウエアの先進的開発

会誌「情報処理」 Vol.49 No.11 学と産の連携による基盤ソフトウエアの先進的開発

今回の特集は「学と産の連携による基盤ソフトウエアの先進的開発」。基盤といいつつも産学連携なので色々と実用例が出て興味深く、気になったものがいくつかあった。

「高信頼組込みシステムのための先進ソフトウェア技術」は、UML 図で書いた設計にモデル検査技術を適用して検証するツールを開発したとか、組込 Linux の CPU 資源に QoS を実装した(CPU Accounting & Blocking Interface)とか、組込で多数センサを積んでLinux上のアプリから利用できるようにミドルウェアを整備してみたとか、組込系統のJVM のガベージコレクションを実時間化してみた(Kaffe with Real-time GC)とか、そういう話。UML の設計検証では実際に商品開発に利用した結果、障害数を1/3程度に減らせたらしい。他も実利用に向けて採用見当中など、それぞれ有効性の確認が取れているようだ。

「SML#:最先端の機能と高い実用性を実現する次世代多相型プログラミング言語」はわかりやすい。プログラミング言語 ML は関数型言語であり、厳密な型とモナドによる柔軟さを特徴とするが、Standard ML of New JerseyObjective Camlもそれぞれに欠点がありいまいち主流にならない。そこで、欠点を解消した Standard ML 上位互換のSML# を開発したとのこと。C 言語などと混ぜた場合の親和性について改良されているなど、興味深い。

「VITC: 情報流解析による高安全Cコンパイラ」は情報流解析という手法によりメモリアクセスの安全化チェックを行うコンパイラ。安全なシステム記述言語および高信頼OS記述言語で公開されている。興味深い点として、メモリ操作の安全性を保証する Fail-Safe C をベースとしている点がある。手法としても、C言語では不可欠なキャストに追随しようとしているなど、一般に使い易いコンパイラでの適用例が期待される。

「産官学連携によるエンピリカルソフトウェア工学の実践データに基づく実証的アプローチ」は、データに基く実証的(エンピリカル)なデータを収集するシステムとして、EASEツールを開発。産学連携でデータ収集を行ったというもの。エンピリカルなデータの元データとして、CVS リポジトリや、Mailman/FML/majordomo などの ML、GNATS/Bugzilla といったバグ管理システムを選んでいるあたりが実用的な情報を収集しようという意思が見えて面白い。解説については EASEプロジェクトに見る計測・定量化の実践 が詳しい。

「100億規模のWebページ収集・分析への挑戦」と「Socio Sense:過去9年に及ぶWebアーカイブから社会の動きを読む」はまとめて俯瞰すると面白かった。

前者は早稲田大でウェブクロウラーを作成、運用し、100億ページを集め解析したというもので、PageRankを計算してみると基本的に右肩下がりのグラフだが途中で SPAM ページの山が出来るとか、クロウラーのアクセス間隔を開けてもリニアに苦情が減るわけではないとか、NetCraft の Web サーバ統計は結構おおざっぱでそれ以上に見つかったとかが興味深い。解析データの一部はe-society projectで公開されている。

後者は、東大が 1999年から集めている 100 億ページ[1]に対して時系列や空間の分析をしたもの。リンク状況をクラスタリングしてみると、新銀行系のウェブサイトは最初は従来の銀行と別クラスタだったがやがて区別無く合流していったとか、生協の白石さんブログの発火点が1つのブログだったとか、情報視覚化されたグラフから見えて興味深い。大規模壁面ディスプレイにみっしりグラフを投影しての分析とか、実に楽しそうだ。

小特集として「IPTVの現在と展望」。IPTV とは、閉ネットワーク/帯域保証つきで流れるストリーム放送のこと。よって、Youtube とか Gyao はオープンネットワーク/保証なしなので IPTV ではない。従来のスキームをひきずっているので、TV を再送信で放送しようとすると都道府県をまたげない地域制限を受けるとか、今まともにサービスしているのがひかりTV位だが、運営の(株)アイキャストにあるのは 2009/12 までの再送信同意だとか。ITU-T が動いているが相互運用こそ可能性があれ、規格的には各国ばらばらだとか。展望とありつつもあまり明るそうには見えない。そして、無料で放送を公開している BBC のBBC iPlayerはやっぱり凄いと再認識。国内でいかにできないかが、記事を読むとよくわかる。

関連記事:

  1. 日本語ページに限って 100 億ページらしい。収集件数の比較データとして、Internet Archive 850億ページ、国会図書館 2000 ページが挙げられていた。 []

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